背景・経緯
設計におけるAI活用は、実験段階から実務段階へ移った。建築分野のAI活用を整理した記事(新しいタブで開きます)では、設計・施工・管理の全工程での変化が取り上げられている。
象徴的なのが、大林組のAiCorbのように、スケッチや3Dモデルから多様なファサード案をAIが生成する仕組みである。初期段階の選択肢を一気に広げる用途で、実プロジェクトへの適用が進んでいる。
詳細・ポイント
構造分野では、竹中工務店の構造設計AIシステムのように、約20年・500件・30万部材規模の実績を学習したAIが、断面推定や部材選定の下書きを担う例が出ている。ゼロから計算するのではなく、経験則の再現を高速化するアプローチである。
重要なのは、いずれも「案を出す」ところまでを担い、採用判断は人が行う構図が維持されている点である。設計者の仕事は、描く作業から、条件を定義し出力を評価する作業へ重心が移りつつある。
業界への波及効果
初期検討の所要時間が短縮されると、クライアントとの合意形成にかけられる回数が増える。案の数で勝負する土俵が生まれる一方、案の良し悪しを説明する能力の差がより表に出る。
若手の育成には両面の影響がある。試行回数を増やせる一方、手を動かして身につく感覚を経ずに済んでしまうリスクも指摘されている。
実務者のアクション
設計者は、AIに与える条件(敷地条件、法規制、要求性能)を構造化して持つことを意識したい。入力の質がそのまま出力の質になる。
組織としては、AI生成物を含む成果物の確認手順を定めることが先決である。誰が何を検証したかを残す仕組みがないまま量産すると、品質のばらつきが後から効いてくる。