背景・経緯

資材価格が契約後に高騰した場合、その負担を誰が負うのか。この問いに制度的な答えを用意しているのがスライド条項である。スライド条項の解説(新しいタブで開きます)では、3つの種類とその違いが整理されている。

公共工事における契約の片務性の排除と不明確性の是正を図るため、国土交通省直轄工事では物価変動等による請負代金額の変更が工事請負契約書に規定されている。

詳細・ポイント

全体スライドは、工期が長期にわたる工事で物価水準全体が変動した場合に適用される。単品スライドは、特定の資材のみが急騰した場合に対応する。インフレスライドは、急激な賃金・物価の変動が生じた場合に、残工事量を対象として適用される。

重要なのは、公共工事は約款に基づき制度として明確に整備されているのに対し、民間工事は完全に契約次第という点である。契約書にスライド条項の記載がなければ、原則として適用されない。

業界への波及効果

資材高騰が常態化した局面では、条項の有無が受注者の収益を直接左右する。民間発注の案件で条項がないまま長期工事を受けることは、価格変動リスクを全面的に引き受けることを意味する。

近年の法改正により、資材高騰等に伴う請負代金等の変更方法が契約の記載事項として重視される方向にあり、「変更を認めない」とする契約の妥当性も問われるようになっている。

実務者のアクション

受注側は、見積提出時に価格の有効期限と変動時の取扱いを明示する運用を勧めたい。契約後の交渉より、契約前の明記の方がはるかに通りやすい。

発注側は、条項を設けないことが結果的に見積のリスク上乗せを招く点を理解しておきたい。リスクを移転すれば、その対価は価格に含まれる。