背景・経緯
用途地域が変わった、駅前の土地区画整理事業が決まった——現場では「決まった」と一言で済むが、その手前には法律で決められた手順がある。都市計画法は、案を作り、公告して見せ、意見を聞き、審議会に諮り、告示して初めて効力を持たせる、という順序を定めている。この順序を飛ばした決定は、後から争われる余地を残す。
手続を知る意味は、行政の内部事情を覗くことではない。事業者・発注者にとっては、公告日・縦覧期間・告示日が、設計の前提を置き直す日付そのものになるからだ。用途地域が変わる日、市街化調整区域から外れる日、都市計画道路の区域内に入る日が確定して初めて、建築確認や開発許可の見通しが立つ。
ここでは、国土交通省の都市計画制度の解説と、都市計画法(新しいタブで開きます)の条文を突き合わせて、決定までの流れを順に追う。個別の当てはめは自治体の判断になるため、最終的には窓口の運用で確認してほしい。
詳細・ポイント
誰が決めるかは法律で分かれている(法第15条)。都道府県が定めるのは、都市計画区域の整備・開発・保全の方針、区域区分(いわゆる線引き)、都市再開発方針等、広域の見地から政令で定める地域地区・都市施設、政令で定める大規模な市街地開発事業、市街地開発事業等予定区域である。それ以外の都市計画は市町村が定める。用途地域を動かしたいのか、線引きを動かしたいのかで、最初に出す窓口が変わる。
市町村が定める都市計画は、議会の議決を経た市町村の建設に関する基本構想に即し、かつ都道府県が定めた都市計画に適合しなければならない(同条第3項)。抵触する場合は都道府県が定めた都市計画が優先する(同条第4項)。市町村と都道府県で話が噛み合わないときの優先順位は、この条文で決まっている。
案は公告の日から2週間、公衆の縦覧に供される(法第17条第1項)。都道府県または市町村は、都市計画を決定しようとするとき、あらかじめその旨を公告し、案に「理由を記載した書面」を添えて、公告の日から2週間、公衆の縦覧に供さなければならない。期間は1か月ではなく2週間である。実務で日数を読み違えると、意見書の準備が間に合わない。
添付される理由書は見落とされやすいが、これは行政が「なぜこの決定が必要なのか」を自ら書いた文書だ。事業の必要性、土地利用上の課題、上位計画との関係が並ぶ。意見書を書く側にとっては、反論すべき論点がどこに置かれているかが分かる一次資料になる。
意見書は縦覧期間満了の日まで(法第17条第2項)。公告があったときは、関係市町村の住民および利害関係人が、縦覧期間満了の日までに意見書を提出できる。提出先は、都道府県の作成に係るものは都道府県、市町村の作成に係るものは市町村である。これは不服申立てではなく、決定手続の内部に用意された意見提出の機会であり、期限を過ぎると制度上の入口は閉じる。
意見書は審議会に必ず届く(法第18条第2項、第19条第2項)。都道府県・市町村は、案を都市計画審議会に付議しようとするとき、提出された意見書の要旨を審議会に提出しなければならない。つまり意見書は担当課の中で止まらず、要旨の形で審議会の資料になる。だから意見書は、情緒的な反対ではなく、論点・根拠・影響を短く整理して書くほうが通りやすい。
決定までの手続(法第18条・第19条)。都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ都道府県都市計画審議会の議を経て決定する(第18条第1項)。国の利害に重大な関係がある政令で定める都市計画は、あらかじめ国土交通大臣に協議し同意を得る(同条第3項)。市町村は市町村都市計画審議会の議を経る。審議会が置かれていない市町村では都道府県都市計画審議会の議を経る(第19条第1項)。市町村が都市計画区域・準都市計画区域について都市計画を決定するときは、あらかじめ都道府県知事に協議する(同条第3項)。知事協議と大臣同意は別の手続で、規模や内容によってどちらが必要かが変わる。
効力は告示の日から生じる(法第20条)。決定したら、その旨を告示し、図書の写しを関係機関に送付し、図書を公衆の縦覧に供する。そして第3項が「都市計画は、告示があった日から、その効力を生ずる」と定める。公告は案を見せる行為、告示は決定の効力発生の通知であり、両者は別物である。
この日付が実務の基準日になる。用途地域の変更なら、その日から建築確認の審査基準が変わる。都市計画施設の区域に入れば、建築には都道府県知事等の許可が必要になる(法第53条第1項)。市街化調整区域では、開発許可を受けた開発区域以外の区域で、原則として建築物を新築できない(法第43条第1項)。一方、新たな用途地域に適合しなくなった既存建築物は、建築基準法(新しいタブで開きます)第3条第2項により従前の規定の適用を受け続ける(いわゆる既存不適格。同条第3項に例外がある)。用途地域の変更は、新築の可否と既存建物の扱いの両方に効いてくる。
変更も同じ手続をたどる(法第21条第2項)。都市計画の変更には、縦覧・審議会・知事協議の規定が準用される。ただし政令で定める軽易な変更については、公告縦覧や知事協議を省略できる。どの変更が軽易に当たるかは内容と規模で決まるため、変更の種類を確認せずに「今回は手続なしで進む」と判断しないことだ。
地区計画は意見を求めて作る(法第16条第2項・第3項)。地区計画等の案は、意見の提出方法その他の政令で定める事項を条例で定めるところにより、その案に係る区域内の土地の所有者その他の利害関係者の意見を求めて作成するものとされている。市町村は条例で、住民・利害関係人が決定や変更、案の内容となるべき事項を申し出る方法を定めることができる。地区計画は、地元の合意形成が手続に織り込まれた制度だと考えたほうがよい。
計画提案制度(法第21条の2〜第21条の5)。一定規模以上の一団の土地について、土地所有者等が都市計画の決定・変更を提案できる。規模は0.5ヘクタール(都市計画法施行令第15条)。ただし条例で、区域や計画の種類を限って0.1ヘクタール以上0.5ヘクタール未満に引き下げることができる。提案には素案を添え、区域内の土地所有者等の3分の2以上の同意を得る必要がある(法第21条の2第4項第2号)。この3分の2は人数ではなく地積の割合で判定する。NPO法人、一般社団・財団法人なども提案できる(同条第2項)。
提案を受けた都道府県・市町村は、遅滞なく決定・変更の必要の有無を判断し、必要があると認めるときは案を作成する(法第21条の3)。決定しない場合は、その旨と理由を提案者に通知し、あらかじめ都市計画審議会に素案を提出して意見を聴く(法第21条の5)。提案が必ず通る制度ではないが、判断と理由の説明は義務づけられている。
事業者・発注者が手続から読み取る6項目
- 公告日と縦覧満了日をカレンダーに入れる。公告日から2週間。意見書を出すなら満了日が締切になる。
- 理由書を読む。事業の必要性と上位計画との関係が書かれており、どこが論点かを示してくれる。
- 意見書は要旨が審議会に出る前提で書く。長文より、論点・根拠・影響を箇条書きで。地権者としての立場、対象地の利用実態、代替案の有無は具体的に。
- 告示日を基準日に設計・申請計画を組み直す。確認申請の審査基準、開発許可の要否、許可が必要になる区域かどうかは、告示日で切り替わる。
- 用途地域・区域区分の変更は、新築の可否と既存不適格の両面で確認する。増築や用途変更で不適合が広がる場合は、既存不適格の保護が及ばないことがある。
- 地区計画の区域内では条例の意見手続を確認する。都市計画法の一般手続とは別に、地区計画独自の意見聴取が動く。
つまずきやすい6点
- 縦覧期間を1か月と思い込む。法第17条第1項は2週間。夏休みや年末年始を挟むと実質の準備期間はさらに短い。
- 縦覧が終わってから意見書を出す。制度上の提出期限は縦覧期間満了の日。以降は審議会や議会への働きかけしか残らない。
- 公告と告示を混同する。案を見せるのが公告、決定の効力が生じるのが告示。スケジュール表で同じ欄に書かれていると読み違える。
- 知事協議と国土交通大臣の同意を混同する。市町村の都市計画区域に関する決定は知事協議、国の利害に重大な関係がある政令で定めるものは大臣協議・同意。
- 計画提案の同意を人数で数える。3分の2は地積ベース。筆数や人数が多くても面積が足りなければ要件を満たさない。
- 軽易な変更の省略規定を一般則と誤解する。省略できるのは政令で定める軽易な変更だけ。通常の変更は縦覧も審議会もやり直す。
まとめ
都市計画決定は、案を作る、公告して2週間見せる、意見書を受ける、審議会と協議を経る、告示して効力を生じさせる、という順序で動く。事業者側が押さえるべきは、公告日・縦覧満了日・告示日の3つだ。とくに告示日は、建築確認や開発許可の前提が切り替わる日であり、設計や資金計画の基準日になる。
構想段階から都市計画の手続を見据えておきたい場合は、企画段階で発注者がやるべきこともあわせて読むと、事業化の順序がつながる。