この記事の使い方

許可申請は、書類を揃える作業だと思われている。だが実際に手が止まるのは書類の前の段階だ。この工事に許可が要るのか、どの窓口に出すのか、誰を専任技術者にするのか、決算が要件を満たしているのか。ここが決まらないと、様式を書き始めても書き直しになる。

この記事は、建設業法と同法施行規則・施行令の条文を引きながら、申請の前に確認する順番をそのまま並べたものだ。新規・更新・業種追加のどれでも使える。チェックボックスは、上から順に潰していく前提で並べている。前の段階が決まっていないと後の判断ができないように作ってあるためだ。

法的な当てはめの最終判断は許可行政庁が行う。判断が割れやすい論点は、必ず窓口で事前に確認してほしい。

0. まず「許可が要るか」「どこに出すか」を決める

書類の話に入る前に、この2つを確定させる。ここが曖昧なまま進むと、窓口違いで全部やり直しになる。

軽微の判定を「年間売上」でやっている会社がある。条文は工事1件ごとの請負代金で判定する。年間の売上規模は関係しない。

1. 新規・更新・業種追加・許可換えのどれか

手続きの種類によって、必要な書類も審査の範囲も変わる。最初に自分のケースを1つに決める。

業種追加を変更届で済ませてしまうのが、いちばん多い事故だ。変更届(法11条1項)は氏名や所在地などが変わったときの手続きで、許可を受けていない業種の工事は請けられない。

2. 経営業務の管理責任者(法7条1号・規則7条)

「常勤」の意味を軽く見ない。非常勤の取締役を当てても要件を満たさない。建設業の経営業務管理責任者は、他社の常勤役員を兼ねていると認められないのが原則だ。

3. 専任技術者(法7条2号)

専任技術者は営業所ごとに置く。本店に1人では足りず、支店にもそれぞれ必要になる。

専任技術者の「名義貸し」は絶対にやらない。置かれなくなった場合は2週間以内に代わりの者について書面を出す義務があり(法11条4項)、無届けのまま工事を続けると許可の取消し事由になり得る。技術者の異動・退職の連絡体制まで含めて設計しておきたい。

4. 社会保険の適用事業所(規則7条2号)

ここは条文を読んでいないと落ちる。法7条1号の基準は経営業務の管理責任者だけではない。

本店だけ届出をして支店を忘れるケースが実務では多い。営業所単位で見る要件なので、支店・営業所の一覧とセットで確認する。

5. 誠実性と欠格事由(法7条3号・法8条)

役員の交代があったときに届出を忘れていると、欠格者が役員のまま残る。欠格事由に該当したときは2週間以内に届け出る義務がある(法11条5項)。決算変更届の時期までまとめて処理しようとすると、その間ずっと欠格状態が続く。

6. 財産的基礎(法7条4号)

法7条4号は「請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと」とだけ書いている。金額は条文にない。数値は国土交通省の許可事務ガイドラインで示される審査基準で、ここが実務書でも混同されやすい箇所だ。

ガイドラインの数値は改定されることがある。申請前に必ず最新版と窓口の運用を確認してほしい。金額の要件は法令の条文ではなく審査基準だという区別を持っておくと、根拠を聞かれたときに説明できる。

7. 特定建設業の加重要件(法15条)

特定建設業の許可を持たずに下請代金総額5,000万円以上の工事を直接請けると、無許可営業になる。下請の発注先が決まった時点で総額が変わるので、工事の途中で気づくケースがある。直接請けの工事は、着工前に下請代金の総額を見積もっておく。

8. 提出書類チェックリスト(法5条・6条・規則2〜4条)

更新では、書類の多くが省略できる。専任技術者の証明書は更新申請者なら省略でき(規則3条4項)、財務書類や定款なども省略できる(規則4条6項)。ただし定款・株主名簿・登記事項証明書・営業の沿革・金融機関名の書面は「記載事項に変更がない場合に限る」(同項ただし書)。変更があれば出す必要がある。

9. 更新の段取り

10. 提出直前の10項目

よくあるつまずき

1. 業種追加を変更届で出す。 変更届は氏名・所在地などの変更を届けるもので、許可を受けていない業種の工事は請けられない。追加は新規と同じ審査で、経営業務管理責任者と専任技術者、財産的基礎をその業種について見られる。

2. 専任技術者を名義だけにする。 専任技術者は営業所に常勤して技術上の管理をつかさどる者で、他の営業所と兼ねられない。退職や異動で置かれなくなった場合は2週間以内の届出義務がある(法11条4項)。名義貸しが発覚すると許可の取消しにつながる。

3. 軽微の判定を分割契約で誤る。 同じ建設業で工事の完成を2以上の契約に分割した場合は合計額で判定する(令1条の2第2項)。1件ずつ500万円未満に切れば許可が要らない、という組み方は通用しない。正当な理由がある場合は例外だが、理由を説明できる資料を残しておく。

4. 大臣許可と知事許可の移動をそのままにする。 支店を他県に出した、あるいは県外の支店を閉じたという場合、法9条の許可換えに当たる。新しい許可を受けた時点で従前の許可は効力を失う。手続きをせずに営業すると無許可になる。

まとめ

許可申請で時間がかかるのは、様式を書く時間ではない。要件を満たす人と数字を確定させる時間だ。だから順番は、①許可の要否と窓口、②手続きの種類、③人(経営業務管理責任者・専任技術者・社会保険)、④欠格、⑤お金(財産的基礎)となる。

この順番で潰していくと、書類の段階で初めて気づく手戻りが減る。判断に迷うのは、経験年数の数え方、指定学科の該当、財産的基礎の当てはめのような、条文だけでは決まらない部分だ。そこは窓口に事前相談の形で持っていくのが早い。

許可の全体像と29業種の区分は建設業許可とはに、許可を取った後の変更届と決算変更届は建設業許可の変更届にまとめている。許可を維持する段階の技術者配置は専任技術者と主任技術者の違い、許可後の等級や工事成績は経営事項審査の受け方を参照してほしい。元請として下請に発注する側の義務は下請代金の支払期日と指導、工事の記録は建設業の帳簿と保存期間に整理している。