結論 — 期限は3つ。混ぜると事故になる
「変更届を出してください」と言われて、まず確認すべきは期限である。建設業法11条は、変更の種類ごとに期限を3つに分けている。ここを1つにまとめて覚えると、必ずどこかで期限を外す。
| 期限 | 何があったとき | 根拠 | 出すもの |
|---|---|---|---|
| 30日以内 | 商号・名称、営業所の名称・所在地、資本金額と役員等の氏名、個人の氏名・支配人、営業所技術者の氏名の変更 | 法11条1項 | 変更届出書(様式第22号の2) |
| 毎事業年度経過後4か月以内 | 決算終了(工事経歴書・直前3年の工事施工金額・財務諸表・納税証明) | 法11条2項 | 変更届出書+様式第2号・第3号・第15〜19号・納税証明 |
| 毎事業年度経過後4か月以内 | 使用人数など法6条1項3号書面の記載事項の変更 | 法11条3項 | 書面(様式第4号など) |
| 2週間以内 | 営業所技術者が置かれなくなった(代わるべき者があるとき) | 法11条4項 | 法6条1項5号の資格書面 |
| 2週間以内 | 許可基準を満たさなくなった、または欠格要件に該当するに至った | 法11条5項 | 届出書(様式第22号の3) |
| 30日以内 | 廃業・死亡・解散 | 法12条 | 廃業届(様式第22号の4) |
実務で使うのは、30日・4か月・2週間の3つだ。以下、条文を引きながら順に説明する。条番号は令和8年11月時点の現行条文による。改正で繰り下がることがあるので、社内文書に引用するときは必ず現行の条文で確認してほしい。
その1:30日以内 — 人と拠点が動いたとき(法11条1項)
法11条1項は、法5条1号から5号までに掲げる事項に変更があったときは、その日から30日以内に変更届出書を提出しなければならない、と定める。5号までに何が入っているかが重要だ。
- 商号又は名称(1号)
- 営業所の名称及び所在地(2号)
- 法人である場合の資本金額及び役員等の氏名(3号)
- 個人である場合の氏名及び支配人の氏名(4号)
- その営業所ごとに置かれる営業所技術者の氏名(5号)
6号(許可を受けようとする建設業)は入っていない。ここが実務で一番大きい。業種を増やすときは、変更届ではなく新規の許可申請(いわゆる追加申請)になる。手数料も要件審査も新規と同じで、専任技術者を業種ごとに置き直す必要がある。「変更届を出したから、ついでに業種も増やせている」と誤解したまま工事を請けると、その業種は無許可営業になる。
同じく、営業所の所在地が他の都道府県に移った場合や、都道府県内だけだったのが2県以上になった場合は、法9条の許可換え(知事許可と大臣許可の切り替え)であって、変更届ではない。変更届で処理できるのは、あくまで同じ許可のままの「記載事項の変更」だ。
様式は施行規則9条1項で別記様式第22号の2と定められている。添付書類は同9条2項に列挙されている。
- 法5条1号から4号までの変更で商業登記の変更を要するもの → 登記事項証明書
- 営業所の新設 → その営業所に係る法6条1項4号(欠格要件に該当しない旨の誓約書)と5号(専任技術者の資格を証する書面)
- 役員等・支配人の新任 → 法6条1項4号の書面、住所・生年月日等に関する調書(様式第12号・第13号)、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
部数は施行規則11条が6条を準用する。国土交通大臣許可は正本・副本各1通、都道府県知事許可は当該知事が定める数。知事許可は自治体ごとに違うので、提出前に手引きで確認する。
起算日は「変更があった日」から30日。登記を要する事項については、登記が完了した日を変更日として扱う運用が一般的だが、この点は自治体の手引きに書き方が分かれている。登記の日と実際の異動日が離れるケース(役員の就任と登記の間隔が空いた等)は、早い方の日付で数えておけば安全だ。
変更届を出しても許可の有効期間は延びない。5年の更新は別の手続きで、満了の30日前までに申請する。
その2:4か月以内 — 毎年の「決算変更届」(法11条2項)
通称「決算変更届」。法律にこの名前があるわけではなく、法11条2項の「毎事業年度終了の時における法6条1項1号及び2号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類」を、事業年度経過後4か月以内に提出する義務を、実務がそう呼んでいる。
出す書類は施行規則10条1項に列挙されている。
- 工事経歴書(様式第2号)
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面(様式第3号)
- 法人:貸借対照表(様式第15号)、損益計算書(様式第16号、完成工事原価報告書を含む)、株主資本等変動計算書(様式第17号)、注記表(様式第17号の2)、附属明細表(様式第17号の3、小会社以外の株式会社)、事業報告書(株式会社)
- 個人:貸借対照表(様式第18号)、損益計算書(様式第19号)
- 納税証明:国土交通大臣許可なら法人税(個人は所得税)、都道府県知事許可なら事業税について、納付すべき額と納付済額を証する書面
納税証明は「納付すべき額」と「納付済額」の両方が必要で、納付済額だけでは足りない。ここで毎年止まるのが個人事業主だ。個人事業税の納税証明書は8月末まで交付されない自治体があり、4月末の期限に間に合わない。大阪府は、所得税の確定申告書の第一表の写し(税務署の受付印があるもの、電子申告なら受信通知)で代替させる運用にしている。自治体ごとに取り扱いが違うので、初回は必ず許可行政庁の手引きで確認する。
期限は決算月できまる
「4か月以内」は月末で切る。
| 決算月 | 提出期限 |
|---|---|
| 3月 | 7月31日 |
| 6月 | 10月31日 |
| 9月 | 翌年1月31日 |
| 12月 | 翌年4月30日 |
| 個人(暦年:1月1日〜12月31日) | 4月30日 |
個人事業主は事業年度を選べない。所得税の暦年(1月1日〜12月31日)がそのまま事業年度になるので、個人の決算変更届は毎年4月30日が期限だ。法人は定款で定めた事業年度による。
工事経歴書は「全部書く」書類ではない
決算変更届で一番時間がかかるのが工事経歴書(様式第2号)である。ここには、前事業年度に完成した工事と、前事業年度末において完成していない工事(未成工事)を記載する。全部を書き写すのではなく、記載要領で範囲が決まっている。関東地方整備局の記載要領によれば、次の順で絞り込む。
- 元請工事の完成工事について、請負金額の大きい順に、元請完成工事高の合計額のおおむね7割を超えるところまで
- 続けて、既に記載した元請工事以外の元請工事および下請工事について、すべての完成工事高の合計額のおおむね7割を超えるところまで
- 軽微な工事(請負代金500万円未満、建築一式工事は1,500万円未満)については、10件を超えて記載する必要はない
- ここまでに記載した請負金額の合計が1,000億円を超える場合、それを超える部分は記載不要
- 最後に、主な未成工事を請負代金の大きい順に
経営事項審査を申請しない建設業者であれば、ここまで厳密でなくてよく、「主な完成工事」と「主な未成工事」を請負代金の大きい順に書けば足りる。ただし経審を受ける予定があるなら、最初から7割ルールで作っておくこと。経審は決算変更届の工事経歴書と突き合わされる。
工事名称は請負契約書に書かれているとおりに写す。略したり整えたりすると、後で契約書と照合したときに説明がつかなくなる。件数と請負代金の合計欄は、記載した工事の合計ではなく、直前1年間の完成工事全体の件数と金額を書く(複数枚になるときは最後の用紙)。
決算変更届を出していないと、経営事項審査は受けられない。経審の審査基準日は直前の決算日で、その決算に係る決算変更届が提出済みであることが前提になっている。経審がないと、公共工事の一般競争入札の参加資格が取れない、あるいは等級が下がる。決算変更届の遅れは、そのまま入札の機会損失になる。
その3:2週間 — 要件を満たせなくなったとき(法11条4項・5項)
30日でも4か月でもない、最短の期限が2つある。どちらも「許可の要件を満たせなくなった」という異常事態の届出だ。
法11条4項は、営業所に置く営業所技術者がその営業所に置かれなくなった場合、または法7条2号ハに該当しなくなった場合において、これに代わるべき者があるときは、2週間以内に、その者について法6条1項5号の書面(資格を証する書面)を提出しなければならない、と定める。技術者が退職し、後任が決まっているときの手続きだ。
法11条5項は、法7条1号(経営業務管理責任者)または2号(専任技術者)の基準を満たさなくなったとき、または法8条1号・7号から14号までの欠格要件に該当するに至ったときに、2週間以内にその旨を書面で届け出る義務を定める。様式は施行規則10条の2により別記様式第22号の3。後任が決まらないとき、経営業務管理責任者が亡くなったとき、役員が欠格要件に当たったときはこちらになる。
30日と2週間の使い分け
同じ「技術者が辞めた」でも、どの期限で出すかは状況で変わる。
- 交代(退職日に後任が就任し、欠員が生じない)→ 法5条5号の氏名の変更なので、法11条1項の30日以内
- 欠員が生じる(退職して後任が未定、または後任の就任が遅れる)→ 法11条4項の2週間以内(代わるべき者がある場合)
- 欠員で後任の見込みがない→ 法11条5項の2週間以内(基準を満たさなくなった旨の届出)
ここで知っておくべき連鎖がある。法29条1項1号は、法7条1号または2号の基準を満たさなくなった場合に、許可行政庁は許可を「取り消さなければならない」と定めている。つまり、技術者が辞めて後任が置けないまま法11条5項の届出を出すと、それは取消し事由の自己申告になる。実際には是正の機会が与えられ、その間に後任を確保すれば取消しには至らないが、放置は許されない。
だから実務の最適解は、退職が決まった時点で後任を確保し、退職日と就任日を同じにして30日以内の変更届で処理する形になる。名簿に「退職予定日」「後任者」「資格区分」の列を置いておくと、この事故が減る。
使用人数の変更は4か月でよい(法11条3項)
人が入退社するたびに30日以内の変更届が必要だと思っている経営者がいるが、そうではない。法11条3項は、法6条1項3号に掲げる書面(使用人数を記載した書面、様式第4号)その他省令で定める書類の記載事項に変更を生じたときは、毎事業年度経過後4か月以内にその旨を書面で届け出る、と定める。施行規則10条2項が対象書類を定めている。
つまり使用人数は、決算変更届と同じ時期に年1回まとめて出せばよい。ただし、建設業法施行令3条に規定する使用人(支店長、支配人など、営業所の業務を統括する者)に新たに該当する者が生じたときは、施行規則8条により2週間以内の届出が必要になる。こちらの「使用人」は人数の話ではなく、欠格要件の審査対象になる役職の話だ。2つを混同しない。
廃業届だけは過料(法12条)
建設業を廃止したとき、法人が合併で消滅したとき、破産手続開始の決定で解散したとき、個人が死亡して相続人が地位承継の認可を申請しなかったときは、30日以内に廃業届を出す(法12条)。様式は施行規則10条の3で別記様式第22号の4。届出義務者はケースごとに決まっていて、破産なら破産管財人、合併以外の解散なら清算人、廃業なら建設業者であった個人または法人の役員になる。
廃業届を怠った場合は法55条1号の10万円以下の過料。後述する変更届・決算変更届の罰則(罰金)とは種類が違うので、同じ感覚で扱わないほうがよい。
出さなかったとき、何が起きるか
1. 刑事罰。法50条1項2号は、法11条1項から4項までの規定による書類を提出せず、または虚偽の記載をして提出したときに、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を定める。同項3号は、法11条5項の届出をしなかったときに同じ刑を定める。法人は法53条2号の両罰規定により、行為者と法人の両方が罰せられる。
決算変更届の未提出が「指導で済む」と受け取られているのは、実際に摘発される例が少ないという運用の話であって、罰則がないという話ではない。許可の更新や経審の場面では確実に効いてくる。
2. 公衆の閲覧に供される。法13条は、許可申請書、法6条1項1号から4号までの書類、変更届出書、決算時の工事経歴書と工事施工金額、使用人数の変更書面を、閲覧所で公衆の閲覧に供することを定める。工事経歴書には発注者名と請負金額が載るので、競合他社にも取引先にも見られる。財務諸表は13条の列挙に入っていないため、閲覧の対象ではない。公開されるのは工事の実績であって、決算の中身ではない。
3. 経審と入札。決算変更届が未提出だと経審を受けられず、経審がなければ公共工事の参加資格審査(全省庁統一資格や自治体の格付け)で不利になる。年度更新の時期に「経審の結果通知が間に合わない」という事故の多くは、決算変更届の遅れが原因だ。
4. 5年更新。更新申請では、許可申請書の記載と変更届の内容が突き合わされる。専任技術者の氏名が退職者のまま、資本金額が増資前のまま、営業所が増えたのに届けていない、といった不整合は、そのまま是正指導になる。更新の直前に慌てて変更届を出すと、審査が止まる。
年間カレンダーに落とす
決算月が3月の法人を例にする。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 4月〜6月 | 決算確定。財務諸表を様式第15号〜第17号の3に組み替え、工事経歴書を7割ルールで作成。前事業年度の完成工事一覧を現場と経理で突き合わせる |
| 7月 | 決算変更届を提出(期限7月31日)。使用人数の変更(法11条3項)も同時に出す |
| 通年 | 商号・役員・営業所・営業所技術者の変更があれば30日以内。欠員が生じたら2週間以内 |
| 更新年 | 満了の30日前までに更新申請 |
担当は総務1人で回る。ただし工事経歴書は現場の完成工事と経理の売上が揃わないと作れないので、7月に慌てないためには4月から5月のうちに前事業年度の完成工事を確定させておく。決算変更届の期限は「事業年度経過後4か月以内」であって、税務申告が終わった後ではない。税理士の決算が遅れて4か月を過ぎるなら、それは期限違反になる。
やりがちな3つの誤り
1. 業種を増やしたつもりで変更届を出す。法5条6号は法11条1項の対象外なので、変更届では業種は増えない。追加は新規の許可申請で、専任技術者の要件も業種ごとに審査される。
2. 決算変更届を「決算が確定してから」と考える。期限は事業年度経過後4か月以内。決算作業の遅れは期限の猶予にならない。
3. 技術者の退職を30日で出す。欠員が生じるなら2週間。しかも後任が決まらなければ法11条5項の届出になり、それは法29条1項1号の取消し事由と表裏になる。
まとめ
変更届は1つではない。30日(人と拠点の変更)、4か月(毎年の決算と使用人数)、2週間(要件を満たせなくなったとき)の3つに分かれている。様式は、変更届出書が第22号の2、基準不適合の届出が第22号の3、廃業届が第22号の4。期限を外すと、法50条の罰則、法13条の閲覧、経審・入札、5年更新の4方向で効いてくる。
制度としては地味だが、ここを年間カレンダーに落とせている会社は、更新も経審も入札も止まらない。逆に、ここが回っていない会社は、毎年7月と更新の年に同じ事故を起こす。
関連する実務は建設業許可の取り方と経営事項審査の受け方で確認できる。変更届の中心になる専任技術者の要件と名簿の作り方は技術者配置の記事、使用人数が増えたときに効いてくるのが社会保険の適用拡大、公共工事の入口は入札不調・不落への対応につながる。決算変更届と同じ年に回ってくる参加資格の定期審査(2年に1回・等級区分)は建設工事の参加資格と等級で整理した。決算変更届に載せる工事経歴と下請支払の数字の根拠になる、工事ごとの帳簿(記載事項・保存期間・電子保存の条件)は建設業の帳簿で整理した。制度変更の施行日は建設業の法改正・制度 施行日カレンダーで追っている。