結論 — 3つの技術者は「置く場所」が違う
名前が似ているので混同されるが、3つは競合する資格制度ではない。置く場所と、根拠条文が違う。
| 呼び方 | 置く場所 | 人数の単位 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 専任技術者(営業所技術者・特定営業所技術者) | 営業所 | 営業所ごとに1人、専任 | 法7条2号・法15条2号 |
| 主任技術者 | 工事現場 | 請け負った工事ごと | 法26条1項 |
| 監理技術者 | 工事現場 | 特定建設業者の元請工事で下請総額が一定以上のとき | 法26条2項 |
つまり、許可を取るときに必要なのが専任技術者、工事を施工するときに現場へ置くのが主任技術者、その主任技術者が置けなくなる(上位の者を置く必要が出る)のが監理技術者である。以下、条文を引きながら順に説明する。条番号は令和8年11月時点の現行条文による。改正で繰り下がることがあるので、社内文書に引用するときは必ず現行の条文で確認してほしい。
専任技術者 — 営業所ごとに1人、これが許可の入口
法7条2号は、一般建設業の許可の基準として「その営業所ごとに、営業所技術者を専任の者として置く者であること」を挙げる。営業所技術者とは「建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者」で、次のイ・ロ・ハのいずれかに該当する者をいう。
- イ 許可を受けようとする建設業に係る工事に関し、高校(中等教育学校を含む)卒業後5年以上、または大学・高等専門学校卒業後3年以上の実務経験を有する者で、在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
- ロ その建設業に係る工事に関し10年以上の実務経験を有する者
- ハ 国土交通大臣がイまたはロと同等以上の知識・技術または技能を有すると認定した者
実務でよく誤解されるのが、イの「5年・3年」が学歴と学科の両方を要求する点だ。高卒で10年やっていればロで通るが、高卒5年でイを使うには在学中の学科が指定学科でなければならない。学科が違う場合はロの10年ルートになる。
特定建設業になると、法15条2号で「特定営業所技術者」を置くことになる。要件はイ・ロ・ハの3つで、一般より厳しい。
- イ 技術検定(施工管理技士など)その他の法令の試験に合格した者、または他の法令の免許を受けた者
- ロ 法7条2号イ・ロ・ハに該当する者のうち、発注者から直接請け負った請負代金4,500万円以上(令5条の3)の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者
- ハ 大臣認定者
ここで効くのが「指導監督的な実務」という言葉だ。同じ現場に2年いたというだけでは足りず、技術上の管理・指導監督を担った経験が問われる。職長経験や現場代理人経験を、工事経歴書でどう説明するかが実務の分かれ目になる。
さらに、指定建設業だけはイまたはハに限定される。ロ(10年ルート)では特定建設業の専任技術者になれない。指定建設業は令5条の2に7業種が列挙されている。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
しゅんせつ工事業と塗装工事業は入っていない。ここは「全部の業種が対象」と覚えている人が多いので、自社の許可業種が7業種に入るかどうかを一度確認しておきたい。
主任技術者 — 請け負った工事ごとに現場へ
法26条1項は、建設業者が請け負った建設工事を施工するときは、その工事に関し法7条2号イ・ロ・ハに該当する者で、工事現場における施工の技術上の管理をつかさどる者(主任技術者)を置かなければならない、と定める。
ポイントは「請け負った工事ごと」である。元請けも下請けも、工事を請け負えば主任技術者を置く義務がある。1つの現場で元請けと下請けが別々に工事を請け負っていれば、それぞれが自分の請負部分について主任技術者を置く。これが「一人しかいないから兼ねている」という運用になりやすいところだが、兼ねられるのは同一の者について法26条4項の範囲内(後述)であり、別の建設業者間で主任技術者を共有することはできない。
なお、法26条の2は、土木工事業または建築工事業を営む者が、土木一式工事・建築一式工事以外の工事を施工する場合のルールを定めている。許可を受けた建設業に係る工事に附帯する他の工事も同様で、主任技術者を置いて自ら施工する場合を除き、その工事に係る許可を受けた建設業者に施工させなければならない。いわゆる一括下請負の禁止(法22条)とセットで押さえる条文だ。
監理技術者 — 下請総額が5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上
法26条2項は、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、その工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(2以上あるときは総額)が、法3条1項2号の政令金額以上になる場合、主任技術者に代えて監理技術者を置かなければならないと定める。
その政令金額が令2条で、次のとおりだ。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 下請代金の総額(一般) | 5,000万円 |
| 建築工事業の場合 | 8,000万円 |
ここで注意したいのは、この金額が「特定建設業の許可要件」と「監理技術者の設置義務」の両方で同じ条文を引いている点だ。法3条1項2号は特定建設業の許可の要件として同じ金額を使っており、法26条2項はそれをそのまま参照している。だから「特定建設業者になった瞬間、5,000万円以上の下請を出す工事では監理技術者が必要」という関係になる。
監理技術者の資格は法15条2号イ・ロ・ハで、専任技術者と同じ条文だ。ただし指定建設業の工事ではイまたはハに限られる。加えて法26条5項が重要で、専任の監理技術者は、監理技術者資格者証の交付を受けている者であって、法26条の6から26条の8までの登録講習(監理技術者講習)を受講した者から選任しなければならない。資格者証は発注者から請求があれば提示する義務がある(同6項)。
「1級施工管理技士を持っているから大丈夫」で終わらせず、資格者証の交付と講習の受講状況を台帳で管理する。ここが抜けると、配置はできているのに専任として認められないという事故になる。
専任義務 — 4,500万円(建築一式は9,000万円)以上
法26条3項本文は、公共性のある施設・工作物または多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるものについては、主任技術者・監理技術者を工事現場ごとに専任の者でなければならないと定める。
その「重要な建設工事」を定めるのが令27条で、次の各号のいずれかに該当する工事で、工事一件の請負代金が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上のものとされている。
- 国または地方公共団体が注文者である施設・工作物に関する工事
- 令15条1号・3号に掲げる施設・工作物に関する工事
- 個別列挙の施設・工作物(石油パイプラインの事業用施設、電気通信事業者の電気通信設備、放送用の鉄塔、学校、図書館・美術館・博物館・展示場、社会福祉施設、病院・診療所、火葬場・と畜場・廃棄物処理施設、熱供給施設、集会場・公会堂、市場・百貨店、事務所、ホテル・旅館、共同住宅・寄宿舎・下宿、公衆浴場、興行場・ダンスホール、神社・寺院・教会、工場・ドック・倉庫、展望塔)
実務で見落とされやすいのは、民間工事でも事務所・共同住宅・工場・倉庫は3号に入るという点だ。「公共工事だけが専任」と思っていると、民間の共同住宅で専任義務を落とす。逆に、3号に該当しない施設(例えば戸建て住宅)は、金額がいくら大きくても令27条の専任義務の対象外になる。
令27条2項は、密接な関係のある2以上の工事を同一の建設業者が同一の現場で施工する場合、これらの工事を一の工事とみなして金額を判定すると定める。分割発注で金額を下げる形になっていないかは、この項で見られる。
専任義務の3つの例外と、兼務できる現場数
法26条3項ただし書は、専任でなくてよいケースを2つ挙げ、法26条の5がさらに1つ加える。ここが実務で最も質問の多い部分なので、条件を分解して整理する。
例外1 — ICTで遠隔管理する(法26条3項1号・令28条)
工事が次のイ・ロ・ハのすべてに該当する場合、専任でなくてよい。
- イ 請負代金が政令金額未満(令28条:1億円、建築一式工事は2億円)
- ロ 現場間の移動時間・連絡方法など、施工体制の確保に必要な事項について国土交通省令の要件を満たす
- ハ 現場の状況確認その他の職務を情報通信技術で行うために必要な措置が講じられている
「ICTで見られるから専任じゃなくてよい」ではなく、金額の上限があることに注意する。1億円以上の工事では、どれだけICT環境を整えてもこの例外は使えない。
例外2 — 補佐する者を専任で置く(法26条3項2号・令29条)
監理技術者について、その職務を補佐する者を専任で現場に置く場合、監理技術者自身は専任でなくてよい。補佐する者の中身は令29条で、法7条2号イ・ロ・ハに該当する者のうち、監理技術者が行う技術上の管理・指導監督についての基礎的な知識・能力を有すると認められる者として国土交通大臣が定める要件に該当する者、または大臣が同等以上と認定した者とされている。
つまり「誰でもよいから現場に人を置けばよい」ではない。資格と能力の要件を満たす補佐が必要で、しかもその補佐は専任でなければならない。人件費の圧縮にはならず、むしろ2人配置になる方法だ。
例外3 — 営業所技術者が兼ねる(法26条の5・令33条・令34条)
法26条の5は、法26条3項本文の工事が次の4要件を満たす場合、営業所の営業所技術者(特定建設業者なら特定営業所技術者)に、主任技術者・監理技術者の職務を兼ねて行わせることができると定める。
- 当該営業所において締結した請負契約に係る工事であること
- 請負代金が政令金額未満(令33条:1億円、建築一式工事は2億円)
- 営業所と現場の間の移動時間・連絡方法などについて国土交通省令の要件を満たす
- 営業所の業務と現場の職務をICTで行うための措置が講じられている
この特例で監理技術者の職務を兼ねる特定営業所技術者は、監理技術者資格者証の交付を受け、法26条5項の講習を受講した者でなければならない(同条3項)。兼ねられる現場の数は1つ(令34条)。「営業所の技術者が複数現場を回る」運用は、この1現場の制限に引っかかる。
兼務できる現場数の上限は2
法26条4項は、3項ただし書(上記の例外1・2)の適用を、同一の主任技術者・監理技術者が職務を行う現場の数が政令で定める数を超えるときは適用しない、と定める。その数が令30条で、2と定められている。
例外を使うと専任でなくてよくなるが、同時に2現場までという上限がかかる。3現場目からは例外が使えないので、専任の者を置くか、別の人を配置するかになる。
特定専門工事 — 型枠と鉄筋だけの特例
法26条の3は、特定専門工事について、元請負人の主任技術者が下請負人の主任技術者の職務を併せて行うことを認める特例だ。対象となる工事は令31条で、次の2つに限られる。
- 大工工事またはとび・土工・コンクリート工事のうち、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事
- 鉄筋工事
金額の要件は、元請負人がその工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の総額が4,500万円未満(令31条2項)。ただし、元請負人が発注者から直接請け負った工事で、下請総額が法26条2項の金額(5,000万円・建築工事業8,000万円)以上となるものは除かれる。
手続きと実質要件も細かい。
- 元請負人と下請負人の書面による合意が必要(同条1項・3項)。電子による合意も可能(4項)
- 元請負人は、あらかじめ注文者の書面による承諾を得なければならない(5項)
- 元請負人が置く主任技術者は、当該特定専門工事と同一の種類の工事に関し1年以上の指導監督的な実務経験を有し、かつ当該現場に専任で置かれること(7項)
- この主任技術者には、3項の専任義務の規定は適用しない(8項)
- 下請負人は、その下請工事を他人に請け負わせてはならない(9項)。再下請の禁止である
型枠と鉄筋は、専門工事として発注されることが多く、下請ごとに主任技術者を置くと現場が回らない。だから特例がある。ただし注文者の承諾と再下請禁止がセットなので、書面が揃っていないと「特例を使ったつもりが使えていない」状態になる。
職務と責任 — 26条の4が定める4つの中身
法26条の4第1項は、主任技術者・監理技術者の職務を「工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督」と定め、これを誠実に行わなければならないとする。
分解すると4つだ。施工計画の作成、工程管理、品質管理、技術上の指導監督。この4つは、現場に置いて名前を届け出れば終わりという性質のものではない。誠実に行う義務がある以上、関与の記録(施工計画の作成関与、工程会議への出席、品質記録の確認、作業員への指示)が残っているかどうかが、事故や検査のときに問われる。
同条2項は、現場の施工に従事する者は、主任技術者・監理技術者がその職務として行う指導に従わなければならないと定める。技術者の指示に従わなかった作業員側の責任も、条文上は明確になっている。
技術者名簿の作り方 — 名簿は「許可申請書」の一部
技術者名簿という独立した法定帳簿があるわけではない。根拠は許可申請の書類にある。
法5条は許可申請書の記載事項を定め、5号に「法7条2号に規定する営業所技術者の氏名」を挙げる。特定建設業では法17条により「法15条2号に規定する特定営業所技術者」に読み替えられる。さらに法6条1項5号は、法7条1号・2号の基準を満たしていることを証する書面の添付を求める。つまり、誰が専任技術者かとその資格を証する書面が、許可申請のセットに含まれている。
実務では、この2つを継続的に管理する台帳が必要になる。最低限、次の列を持たせたい。
| 列 | 内容 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 氏名・生年月日 | 本人特定 | 法5条5号 |
| 所属営業所 | 営業所ごとの配置 | 法7条2号・15条2号 |
| 許可業種 | 29業種のどれか | 業種ごとに要件が違う |
| 資格区分 | イ/ロ/ハのどれで通しているか | 法7条2号・15条2号 |
| 資格・学歴・実務年数 | 証憑の番号と年月日 | 法6条1項5号 |
| 指導監督的実務の有無 | 特定建設業のロ要件用 | 法15条2号ロ |
| 監理技術者資格者証 | 交付番号・有効期限 | 法26条5項・27条の18 |
| 講習受講日 | 監理技術者講習 | 法26条5項 |
| 退職・異動日 | 欠員の把握 | 法11条4項の2週間 |
専任技術者が退職したときが最大の事故ポイントだ。法7条2号の要件は「置く者であること」なので、欠員が出た時点で要件を満たさなくなる。法11条1項の変更届は、法5条1号から5号までの事項に変更があったとき30日以内だが、専任技術者の欠員には別の短い期限がある。法11条4項は、営業所に置く営業所技術者がその営業所に置かれなくなった場合または法7条2号ハに該当しなくなった場合で、これに代わるべき者があるときは、2週間以内に法6条1項5号の書面(資格を証する書面)を提出しなければならないと定める。30日ではなく2週間。名簿に「退職予定」の列を足しておくと、この事故が減る。
同じことは主任技術者・監理技術者にも言える。現場ごとに誰を置いたかを一覧にしておかないと、竣工後に「あの期間は誰が技術者だったか」を説明できない。施工体制台帳(法24条の8)と技術者名簿を、現場IDで突き合わせられる形にしておくのが望ましい。
やりがちな3つの誤り
1. 専任技術者と主任技術者を同じ人で済ませたつもりになる。営業所の専任技術者は「専任の者」であり、常勤で営業所の技術上の管理をつかさどる。その人が現場の主任技術者を兼ねることは、法26条の5の特例(請負代金1億円未満・現場1つなど)の範囲でしかできない。無条件に兼務できるわけではない。
2. 指定建設業でロ(10年)ルートを使う。特定建設業の専任技術者は、指定建設業(7業種)ではイまたはハに限られる。10年の実務経験があっても、指定建設業では資格者証・免許・大臣認定のいずれかが必要だ。
3. 監理技術者の金額を「下請1件5,000万円」と読む。法26条2項は下請契約が2以上あるときは総額で判定する。1件ずつは3,000万円でも、3件で9,000万円になれば監理技術者の設置義務が生じる。
まとめ
技術者配置の制度は、金額の境目さえ押さえれば整理できる。営業所の専任技術者は許可の入口、現場の主任技術者は施工の前提、監理技術者は特定建設業者の元請工事で下請総額が5,000万円(建築工事業8,000万円)以上になったときの上位配置。専任義務は4,500万円(建築一式9,000万円)以上で、例外はICT遠隔・補佐の専任配置・営業所技術者の兼務の3つ、兼務は2現場まで。特定専門工事は型枠と鉄筋に限り、注文者の承諾と再下請禁止が付く。
この制度は、資格者を「持っているか」ではなく「置けているか」で運用される。人が辞める、現場が増える、下請が積み上がる。この3つが起きたときに要件を満たさなくなるので、名簿と配置表を先に整えておくことが、結果として一番安いリスク管理になる。
関連する実務は建設業許可の取り方と経営事項審査で確認できる。下請契約の支払条件は下請代金の支払期日と下請指導、現場の記録は出来形管理の基準と工事写真の管理基準につながる。技術者を置けないまま工事を始めると安全衛生の責任も動くので、安衛法2027の一人親方規制もあわせて読んでほしい。制度変更の施行日は建設業の法改正・制度 施行日カレンダーで追っている。