背景・経緯
2027年4月1日、技能実習に代わる育成就労制度が動き出す。技能実習制度は「発展的に解消」され、外国人は最長3年間、雇用契約の下で働きながら技能を修得し、特定技能1号を目指す仕組みに置き換わる。改正は入管法と技能実習法の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)による。全く新しい法律が作られたのではなく、旧・技能実習法(平成28年法律第89号)が「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」、いわゆる育成就労法に生まれ変わった形だ。条文の番号を追うときは、この読み替えを意識しておく必要がある。
建設分野は、令和8年1月23日の閣議決定で育成就労制度の対象分野(育成就労産業分野)に追加された。建設分野の具体的な条件は、5大臣が定める分野別運用方針と告示に書かれている。業務区分、主たる技能、日本語と技能の水準、転籍制限、受入れ機関の要件は、すべてそこに落ちている。
時間軸が独特だ。受入れが始まるのは2027年4月1日だが、申請はすでに動いている。監理支援機関の許可の申請は2026年4月15日から、育成就労計画の認定の申請は同年9月1日から、外国人技能実習機構(OTIT)が受け付けている。認定を得ても、外国人が働き始められるのは施行日以降になる。裏返すと、2027年4月に現場へ入れる計画を立てるなら、いま申請を出しておく必要がある。
詳細・ポイント
受入れ枠は「上限」として運用される。建設分野全体の受入れ見込数は、令和6年度から令和10年度までの5年間で19万9,500人。内訳は1号特定技能が7万6,000人(5年間の上限)、育成就労が12万3,500人(令和9年度から2年間、令和10年度末までの2年間の上限)である。数字の根拠も運用方針に書かれている。令和10年度に必要となる建設技能者は約312万人、確保できる見込みは約276万人で、36万人程度が不足する。生産性向上で14万9,000人、処遇改善による国内人材の追加確保で1万1,500人を上積みしても、なお20万人程度が足りない。この不足を埋める枠が19万9,500人だ。
見込数を超えることが見込まれる場合、国土交通大臣は法務大臣(育成就労は厚生労働大臣も)に対し、在留資格認定証明書の交付停止や育成就労認定の停止を求める(入管法第7条の2、育成就労法第12条の2)。枠は目標ではなく上限として動く。受入れ計画を立てる側は、枠が埋まった後の停止を前提に置いたほうがいい。
業務区分は特定技能と同じ3つ。土木、建築、ライフライン・設備である。育成就労の業務区分と従事する業務は特定技能制度と同一で、たとえば土木は「指導者の指示・監督を受けながら、土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業等に従事する業務」と定義されている。現場で配属を決める単位が、この3区分になる。
「主たる技能」を1つ決めて3年計画を書く。育成就労計画には、業務区分に対応する主たる技能を定める。土木なら型枠工事・鉄筋組立て・とび・コンクリート圧送工事・ウェルポイント工事・構造物鉄工・建設機械施工・溶接・鉄筋継手など、建築なら大工工事・左官・タイル張り・内装仕上げ・サッシ施工・防水施工など、ライフライン・設備なら建築配管・プラント配管・冷凍空気調和機器施工・電気設備施工などが、技能検定の職種と作業の単位で並ぶ。主たる技能の修得に必要な業務には、3年間の就労時間の3分の1以上を充てる。現場の都合で別の作業に流す運用は、計画とのずれとして現れる。
日本語と技能は3段階で上がる。入国までに、日本語教育の参照枠A1相当以上と認められるか、認定日本語教育機関等でA1相当の日本語講習を受講する。開始後1年経過時までに、主たる技能の技能検定基礎級(建設機械施工・溶接・管路更生・鉄筋継手・電気設備施工は育成就労評価試験の初級)とA1相当。終了時までに、技能検定3級(同じく評価試験は専門級)とA2.2相当である。
この終了時の水準が、そのまま特定技能1号の技能水準になる。技能実習2号から特定技能1号へ移る際には試験が免除される扱いがあるが、育成就労から移る場合に免除はない。ここは混同しやすい。さらに上を目指す特定技能2号は、複数の建設技能者を指導する班長としての実務経験、技能検定1級等、B1相当の日本語が要件になる。
受入れ機関(育成就労実施者)の条件は8つ。①建設業法第3条の許可を受けていること。②計画の申請日前5年以内または申請の日以後に、建設業法に基づく監督処分を受けていないこと(同法第29条第1項第5号の処分を除く)。③同等の業務に従事する日本人と同等以上の報酬を安定的に支払い、就労期間に応じた昇給その他の待遇の向上を行うこと。④実施者と受け入れる外国人を建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録すること。⑤国交省が組織する育成就労の協議会に加入すること(受入れ団体に所属していれば加入したものとみなす)。⑥受け入れる外国人の数が、常勤職員(技能実習生・育成就労外国人・1号特定技能外国人を除く)の総数を超えないこと(優良な実施者は除く)。⑦国交省の調査または指導に必要な協力を行うこと。⑧入国後講習で労働安全衛生に関する講習を受講させること。
転籍は2年まで制限される。本人の意向による実施者の変更には、技能検定基礎級とA2.1相当の合格が必要で、転籍制限期間は2年。理由も運用方針に明記されている。技能の修得に相応の時間がかかること、工期が1年を超える工事があること、地方部の離職者率が高く定着を促す必要があること、そして建設分野は他産業より外国人の労働災害発生率が高く、労働安全衛生教育に時間をかける必要があること。制限を1年より長く取る事業者には待遇向上策が課される。協議会が建設業の前年の平均賃金上昇率を基準に昇給率を設定・公表し、所定内賃金を1年目から2年目にかけてその率以上に上げる。
経過措置: いま在留している技能実習生は切り捨てられない。2027年4月1日の時点で技能実習をしている人は、そのまま技能実習を続けられる。技能実習3号への移行は、施行日時点で技能実習2号であり、かつ同年4月1日時点で2号の活動を1年以上していることが要件になる。特定技能1号への移行は、当分の間、技能実習2号を良好に修了し、従事する業務の関連性があれば認められる。新規の受入れの受け皿が育成就労に移るだけで、すでに在留している人の扱いは別に定められている。
費用と税の2点は説明責任が重い。送出機関が外国人本人から徴収できる費用は、月給(所定内月額)の2か月分が上限で、超える部分は実施者と監理支援機関が負担する。給与は原則として租税条約による免税の対象外で、所得税・住民税の課税対象になる(国税庁に照会した内容がQ&Aに載っている)。どちらも、本人と送出機関に説明するのは受入れ側の仕事になる。なお雇用形態は直接雇用に限られ、派遣形態が認められるのは農業と漁業に限られる。
2027年4月までにやっておく6項目
- 常勤職員の数を数え直す。受入れ人数の上限は、技能実習生・育成就労外国人・1号特定技能外国人を除いた常勤職員の総数。既に受け入れている人が多いほど、新たに受け入れられる枠は小さくなる。
- 計画認定から逆算する。認定申請、認定、在留資格認定証明書の交付、入国、入国後講習という順で進む。2027年4月1日の受入れに間に合わせるには、申請の順番と時期を先に決める。
- 協議会か受入れ団体かを決める。国交省の育成就労の協議会に加入するか、受入れ団体に所属して加入したものとみなされるかのどちらか。どちらも取らないと要件を満たさない。
- CCUSに登録する。事業者と受け入れる外国人の双方が対象。登録は就業開始前に済ませる。
- 賃金表と昇給ルールを直す。同等以上の報酬と、2年目にかけての昇給(協議会が公表する上昇率以上)を、就業規則と賃金表のどこに落とすかを決める。
- 教える体制と記録を用意する。日本語はA1からA2.2へ、技能は基礎級から3級へ。指導員、講習の受講記録、労働安全衛生講習の実施主体を決めておく。段階ごとの合格が計画の前提になっている。
つまずきやすい6点
- 計画の認定を得た日から働けると読む。働き始められるのは2027年4月1日以降。認定は受入れの準備が整っていることの確認であって、在留資格そのものではない。
- 3年で自動的に特定技能1号になれると読む。移行には技能検定3級等とA2.2相当の合格が必要で、技能実習2号からの移行のような試験免除はない。
- 転籍は本人の自由と読む。技能検定基礎級とA2.1相当が要件で、2年間は制限される。転籍を前提にした採用説明は、後で摩擦になる。
- 受入れ人数の分母を間違える。分母は常勤職員の総数で、技能実習生・育成就労外国人・1号特定技能外国人は除く。逆に、既存の受入れ人数は分母に入れない。
- 2027年4月以降も技能実習の新規計画を出せると読む。在留中の人が続けられる経過措置と、新規受入れの受け皿が育成就労に移ることは別の話である。
- 費用の上限と課税を説明しない。送出機関の徴収は月給の2か月分が上限、給与は原則として課税対象。ここを曖昧にしたまま募集すると、入国後のトラブルになる。
まとめ
育成就労制度は、技能実習の置き換えではなく、育成と移行を一本の線につなぐ作り替えだ。3年間で主たる技能を修得させ、日本語をA2.2まで引き上げ、特定技能1号の入口に立たせる。受入れ側には、許可と処分歴、報酬と昇給、CCUS登録、協議会加入、人数枠、労働安全衛生講習という条件が課される。
押さえるべき日付は3つ。2026年4月15日(監理支援機関の許可申請開始)、2026年9月1日(育成就労計画の認定申請開始)、2027年4月1日(運用開始)。最初の2つは過ぎており、申請はすでに可能だ。枠が上限として運用される以上、検討を先延ばしにするほど選択肢は狭くなる。
建設分野の受入れの全体像は建設業許可とはと経営事項審査(経審)とはで確認できる。協議会の発足経緯は建設分野の育成就労制度に伴う協議会の発足とその意義、現場の安全衛生体制は安全衛生管理計画書に何を書くかで扱っている。施行日までの他の制度変更は建設業の法改正・制度 施行日カレンダーにまとめた。